2016年6月11日土曜日

Vol.03 2声のバッキング(1)

3.1 Form1-1

 まずはじめに2声だけを使った左手ボイシングについて紹介します。

 Vol.2において、メジャーコード、マイナーコード、ドミナントコードを区別するための目印になる音は4 和音の中の下から2番目(3rd) と4 番目(7th) の音である、と学びました。ならば、この2 声だけ使えばコード進行を感じさせることができるはずです。

 もちろん調性を決定するために、ベースの音(4声の中で一番低い音)が鳴る必要があります。しかしこれは、バンドのベーシストに任せて、ピアニストは上の二つの音を出すことにしましょう。コードを分解し、別の楽器に割り当てる、これがアンサンブルです。そしてこのコードを分解して音を出す/出さない、という作業が案外難しいのです。




Dm7 - G7 - C△7 (key C)


 なお、左端の□マークで示された音は参考までに示したベース音です。スペースの関係でこのベースの音は1 オクターブの範囲に収まるように設定しています。したがって実際の演奏に当たってはオクターブの上げ下げによってよく響くように耳で判断してください。

 とにもかくにもダイアトニックスケールの上にできる7 つのコードのうち、2 番目のコード(Dm7)、5 番目のコード(G7)、1 番目のコード(C△ 7) をこのように演奏することで、ジャズの曲の進行(起承転結あるいは序破急)を感じさせる最小の部品ができあがることになります。

 以後各ボイシングにおける、構成音の意味、C のキーにおける音、演奏時の指使いを次のような図でまとめます。


 では改めてこのForm1-1 の内容を見てみましょう。

 音使いについては、各コードともに3rd と7thの音、すなわちメジャー、マイナー、ドミナントを定義づける音しか使っていません。そして図のようなボイシングをすることによって、3 つのコードの進行間で最小限の音の飛び方しかしていないことがわかります。

 それはすなわち、指使いをほとんど動かす必要がないことを意味します。

 まず最初のDm7 にとって重要な3rd と7th の音すなわちF とC を弾きます。小指にF と人差し指にC を割り当てるとよいでしょう。

 次のG7 にとって重要な3rd と7th の音すなわちB とF を弾きたいのですが、そのまま弾くためにはさきほどの和音から、随分と離れた位置に手を動かす必要があります。これではいけません。音楽の進行の原則は、なるべくなめらかにです。ここでB とF の上下関係を逆さにすると、さきほどのDm7 で弾いた人差し指を半音ひとつ分左に移すだけでいい(小指はそのまま)ことがわかります。この動きはなめらかさの極致ですね。

そして最後の着地点、C△ 7 にとっての重要な3rd と7th の音すなわちE とB にたどり着くためには、直前のG7 での小指を半音ひとつ左に移すだけでいい(人差し指はそのまま)ですね。

 いかがでしょうか。ほとんど指が動かす必要が無いことがわかります。しかし十分に説得力のある進行がサウンドとして得られます。これならば、高速なジャズの曲で右手でアドリブを弾くときに、左手が最小限の動きでコード感を出すことが可能となるのです。そう、困ったときは3 度と7 度だけを弾け、です。

 このパターンをForm1-1 とします。

 ではキーFとB♭におけるピアノ譜も紹介しておきましょう。指使いは同じでよいです。





Gm7 - C7 - F△7 (key F)




Cm7 - F7 - B♭△7 (key B♭)

 またお約束通り、すべてのキーにおけるマイナスワン音源もアップしておきます(mp3)。






 なお、キーの移り変わりは以降すべて共通して完全4度進行をします。すなわち次の図を時計回りで進んでいくC→F→Bb…という順番です。これによって♭が一つずつ増えていくキーへ移調してゆきます。




 というわけで、12キーでの2-5-1において3度と7度を割り出し、マイナスワンに合わせて演奏する練習をしてみてください。

全キーでの2-5-1は以下の通り。

key C    Dm7   -  G7   -  C△7
key F    Gm7   -  C7   -   F△7
key Bb  Cm7   -  F7   -   Bb△7
key Eb  Fm7   -  Bb7  -  Eb△7
key Ab  Bbm7 -  Eb7  -  Ab△7
key Db  Ebm7 -  Ab7  -  Db△7
key Gb  Abm7 -  Db7  -  Gb△7
key B    Dbm7 -  Gb7  -  B△7
key E    Gbm7 -  B7    -  E△7
key A    Bm7   -  E7   -   A△7
key D    Em7   -  A7   -   D△7
key G    Am7   -  D7  -   G△7

と、つきはなしたものの、ここは大事なところなので、全キーのピアノ譜をのせておきます。

キーCからDbまで。各図で進行は、まず左列を縦にすすみ(キーC→FBb)、右列に移動します(キーEbAbDb)。


キーGbからGまで。




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本日のジャズピアノこの1枚

ハンクジョーンズ / バップリダックス
Hank Jones / Bop Redux


1 Yardbird Suite
2 Confirmation
3 Ruby, My Dear
4 Relaxin' With Lee
5 Bloomdido
6 'Round Midnight
7 Moose the Mooche
8 Monk's Mood

ミスタースタンダード、ハンクジョーンズが、チャーリーパーカーとセロニアスモンクの曲だけを取り上げた、ビバップ直球一本勝負のアルバム。奇をてらうことは一切なく、歌心あるアドリブの模範演奏がここにあります。音源に合わせて一緒に歌えるようになるまで聞きこみましょう。


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